明るい窓辺の腰かけスペースで、大人と子どもが向かい合って座り、そっと手を取り合っている。目線の高さをそろえて落ち着いた声で伝える場面のイメージ 🏠 家庭でのかかわり
家庭でのかかわり 公開: 2026年9月6日

発達障害の子への叱り方|怒鳴らずに伝わる言い方と、小学生にも届く褒め方

この記事の目次
  1. 発達障害の子に叱っても伝わらないのはなぜ?
  2. 叱る回数を減らす「叱る前」の工夫
  3. 伝わる叱り方は「近づく・落ち着いた声・短く・肯定形」
  4. やってしまいがちな叱り方と、代わりの言い方
  5. 「褒めるところがない」と感じるときの褒め方
  6. 叩いてしまう日があるときに知っておきたいこと
  7. まとめ

「何回言ったら分かるの」と言った直後に、また同じことをしている。声を張り上げて、やっと体が動く。寝顔を見ながら、今日も怒鳴ってしまったと落ち込む——。同じ言葉を、同じ大きさの声で繰り返している自分に気づくと、育て方そのものを疑いたくなります。先にお伝えすると、叱っても伝わらないのは、しつけが甘いからでも、愛情が足りないからでもありません。届く伝え方には形があります。近づいて、落ち着いた声で、短く、してほしいことを肯定形で言う。この記事では、伝わらない理由と、叱る回数そのものを減らす工夫から始めます。そのあとに、否定形を肯定形に言い換える具体例、やりがちな叱り方の代わりの言い方、褒めどころの見つけ方、怒鳴ってしまった日の受け止め方を順に見ていきます。

発達障害の子に叱っても伝わらないのはなぜ?

伝わらない理由は、聞く気がないことではなく、届き方のずれにあります。よくあるのは次の4つです。

  • 一度に複数の指示が入りにくい: 「片付けて、手を洗って、座って」は3つの指示です。最初の1つで止まる、あるいは最後の1つだけが残ることがあります
  • 気持ちが高ぶっている最中は言葉が届きにくい: 泣いている、怒っている、興奮しているときは、内容よりも声の大きさだけが伝わります
  • 抽象的な言い方が伝わりにくい: 「ちゃんとして」には、何をどうすればいいかの情報が含まれていません
  • 注意されること自体に慣れてしまう: 一日中注意され続けると、注意が生活の背景音になり、特別な合図として働かなくなります

こども家庭庁も、言うことを聞かない理由はさまざまで、大人に言われていることが理解できず、結果として言うことを聞かない子に見えることもあると説明しています。つまり、届いていないだけの場面が、反抗として扱われてしまうわけです。

💡 しつけが甘いからではありません

伝わらない背景にあるのは、指示の入り方や気持ちの高ぶりやすさといった特性です。こども家庭庁がまとめた資料でも、体罰をしてしまう背景の一つとして、言うことを聞かないのは親が甘いからだと責められた経験が挙げられています。責められる側にあなたが立つ理由はありません。

高ぶっている最中の関わり方は、発達障害の子の癇癪への対応で詳しく扱っています。

叱る回数を減らす「叱る前」の工夫

言い方を変える前に、叱る場面そのものを減らせると、親も子も消耗しません。こども家庭庁は、触られたくないものは見えないところや届かないところにしまうなど、叱らないでよい環境づくりを勧めています。片付けをしない場合も、何をどこに置けばいいかが分かると自分でやりやすくなる、と具体例を挙げています。

家庭ですぐ試せるのは、この4つです。

  • 予告する: 終わりの5分前と1分前に「あと5分で終わりね」と2回入れる
  • 見せる: 口頭だけにせず、紙やホワイトボードに順番を書いて置いておく
  • 置き場所を決める: ランドセル、上着、水筒の定位置を1か所ずつ決めて写真を貼る
  • 時間帯を避ける: 空腹と寝不足が重なる時間に用事を入れない

切り替えの場面でつまずくことが多いなら、切り替えができない子への声かけの工夫も合わせて使えます。

伝わる叱り方は「近づく・落ち着いた声・短く・肯定形」

叱り方には、支援の現場で共通して使われている型があります。厚生労働省の事業でつくられたペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、この型を次のように整理しています。まず苛立ちや怒りを抑えておだやかに、子どもの近くに行き、落ち着いた静かな声で、分かりやすい指示を出す、というものです。こども家庭庁も、大声で怒鳴るより、肯定文で何をすべきかを具体的に伝えるほうが届きやすいと案内しています。

1
近づく別の部屋から呼ばず、手が届く距離まで行きます。目線の高さもそろえます。
2
注意をこちらに向ける名前を呼び、返事や視線が返ってから話し始めます。返事がないうちは指示を出しません。
3
短く、肯定形で1つだけ言うやめてほしいことではなく、してほしいことを言います。指示は一度に1つです。
4
やり始めたら、その場で認める完了を待たず、動き出した時点で「靴はけたね」と声をかけます。

大人の手が横になった子どもの髪にそっと置かれているクローズアップ。近づいて落ち着いた声で伝えるほうが、離れた場所から大きな声を出すより届きやすい

いちばん効くのは、否定形を肯定形に置き換えることです。「走らないで」と言われた子は、走る以外に何をすればいいかを自分で考えなければなりません。その一手間が抜け落ちると、聞いていないように見えます。

つい出てしまう言い方伝わりやすい言い方
走らないで歩こう
早くしてあと3分で靴をはこう
ちゃんと座っておしりを椅子につけよう
うるさい小さい声で話そう
触らないで手はひざの上に置こう
片付けなさい車のおもちゃを箱に入れよう
何回言ったら分かるのもう一度言うね。連絡帳を出してね

言い換えのコツは、動作の言葉で終わることです。歩く、置く、入れる、はく。名詞や気持ちの言葉ではなく、体の動きが浮かぶ言葉にすると、その場で実行できます。

やってしまいがちな叱り方と、代わりの言い方

疲れているときほど出てしまう言い方があります。効き目が薄いだけでなく、次に伝えたいことまで届きにくくします。

つい出てしまう叱り方子どもに残るもの代わりの言い方
人格を否定する(どうしてあなたは)行動ではなく自分が否定された感覚行動だけを名指す(今、お茶がこぼれたね。ふきんを持ってこよう)
過去を蒸し返す(この前も、いつも)今なにを直せばいいのか分からない今日の1つに絞る(今は靴を並べよう)
きょうだいと比べる(お姉ちゃんはできるのに)きょうだいへの反発と自信の低下その子の前回と比べる(昨日より早く座れたね)
大勢の前で叱る恥ずかしさが先に立ち内容が入らないその場を離れ、2人になってから短く
長い説教をする途中で聞くのをやめてしまう20秒で終える。理由は1つだけ

こども家庭庁は、叩かれたり怒鳴られたりすると恐怖心から一時的に言うことを聞くかもしれないが、それは自分で考えて学んだ姿ではないと説明しています。その場が静かになることと、次に同じ場面で行動が変わることは別だ、という指摘です。

「褒めるところがない」と感じるときの褒め方

褒め方には、叱り方と同じくらい具体的な形があります。こども家庭庁は、靴をそろえて脱いでいるね、のように肯定的な注目を向けると、その態度や行動が増えることにつながると説明しています。あわせて、何が良いのかを具体的に伝えること、褒めるならその場ですぐが効果的で、寝る前など落ち着いたタイミングでも構わないことを挙げています。ペアレント・トレーニングでも、子どもの良いところ探しと褒めることが、プログラムの核になる要素の一つに置かれています。

褒めるところが見つからない日は、うまくいったことを探すのをやめて、すでにできている当たり前の行動を、そのまま言葉にするところから始めてください。

  • 朝、自分で起きてきた
  • 声をかけたら返事をした
  • 靴を脱いだあと、片方だけそろえた
  • 水筒を流しに出した
  • 30分だけでも宿題の机に座った

評価の言葉は要りません。「起きてきたね」「返事してくれたね」で足ります。褒め言葉を探そうとすると口が止まりますが、見えたことを言うだけなら続きます。

家庭でできる関わり方をまとめて学びたいときは、自宅でできるペアレント・トレーニングで流れを確認できます。発達障害ナビポータルも、子育てに難しさを感じる保護者が参加できるプログラムとして、ペアレント・プログラムやペアレント・トレーニングを紹介しています。

叩いてしまう日があるときに知っておきたいこと

2019年6月に成立した児童福祉法などの改正で、しつけに際して体罰を加えてはならないことが法律に定められ、2020年4月から施行されています。こども家庭庁は、体罰が子どもの成長や発達に悪影響を与えることは科学的にも明らかになっていると整理しています。体罰を受けていた子どもは、落ち着いて話を聞けない、約束を守れない、我慢ができないといった行動面の問題のリスクが高まる、と指摘する調査研究も紹介されています。

ここで大切なのは、この事実が誰かを責めるために置かれているのではない、という点です。同じ資料は、体罰をしてしまう背景として保護者側の状況も並べています。いくら向き合っても泣き止まない、何度言っても動いてくれない、周囲に相談したり頼れる人がいない、自分自身もそうやって育ってきた。つまり、性格や愛情の問題ではなく、支えが足りていない状況の問題として扱われています。

手が出そうな場面は、たいてい親の余力がゼロに近い時間に起きます。こども家庭庁は、否定的な感情が生じたときに深呼吸する、ゆっくり5秒数える、窓を開けて風にあたるといった工夫を挙げ、時には保護者自身が休むことも大切だと書いています。

💡 今日うまくいかなくても、関わり直せます

怒鳴ってしまった日があっても、そこで積み上げてきたものが消えるわけではありません。同じ資料は、その後の適切な関わりや周囲の支援によって回復していくことも報告されている、と伝えています。一人で持ちこたえるのをやめて、話せる相手を1人つくることが、次の1日を軽くします。

相談先はいくつもあります。市区町村の子育て相談窓口や保健センターは、診断の有無に関わらず入り口になります。児童相談所相談専用ダイヤル0570-783-189は、虐待の通告だけでなく子育ての悩みの相談にも使えます。発達障害についての情報を福祉・教育・医療・労働の分野にまたがって整理しているのが、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターです。消耗が続いているときは発達障害の子育てに疲れたときにもどうぞ。

まとめ

  • 叱っても伝わらないのは、指示が一度に複数入りにくく、高ぶっている最中は言葉が届きにくいためです。しつけや愛情の問題ではありません
  • 言い方を変える前に、予告する、見せる、置き場所を決める、時間帯を避けるで、叱る場面そのものを減らせます
  • 伝わる形は、近づく・落ち着いた声・短く1つ・肯定形の4つ。「走らないで」ではなく「歩こう」と、動作の言葉で終わらせます
  • 人格の否定、過去の蒸し返し、きょうだいとの比較、人前での叱責、長い説教は効き目が薄く、次に伝えたいことまで届きにくくします
  • 褒めるところが見つからない日は、すでにできている行動をそのまま言葉にすれば足ります
  • 体罰は2020年4月から法律で禁じられていますが、それは保護者を責めるためのものではなく、支える側を増やすための決まりです

今夜はここまでで大丈夫です。明日、1回だけ試すとしたら、いちばんよく言っている否定形の言葉を1つ選んで、肯定形に書き換えておいてください。紙に1行書いて冷蔵庫に貼っておくだけで、とっさのときに口から出る言葉が変わります。

よくある質問

発達障害の子は叱らないほうがいいのですか?

叱らないことが目標ではなく、危ないことや人を傷つけることは止める必要があります。変えたいのは回数と言い方です。注意が1日に何十回も続くと言葉の重みが薄れるので、本当に止めたい行動を絞り、それ以外は環境の工夫で起きにくくするほうが結果的に伝わります。

叱ったあとに子どもへ謝ったほうがいいですか?

言いすぎたと感じたときは、短く伝えて構いません。長い説明や自分の事情の説明は不要で、大きな声を出してごめんね、の一言で足ります。謝ることは親の立場を弱めるものではなく、感情的になったあとの立て直し方を子どもに見せる機会にもなります。

手が出そうになったとき、その場でできることはありますか?

子どもの安全が確保できているなら、いったんその場を離れるのがいちばん確実です。こども家庭庁は、深呼吸する、ゆっくり5秒数える、窓を開けて風にあたるといった気分転換を挙げています。もう限界だと感じるときは、児童相談所相談専用ダイヤル0570-783-189に電話して構いません。

学校や園でも叱られてばかりのようです。家ではどうすればいいですか?

外で注意を浴び続けている子は、家に帰るころには余力が残っていないことがあります。家では止める役を最小限にして、できている行動に言葉をかける役に回すと消耗を減らせます。注意の量が多すぎると感じたら、担任に一日の様子を具体的に聞き、家庭と学校で言い方をそろえる相談をしてみてください。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。