📋 制度とお金 発達障害の子が使えるお金の制度一覧|手当・医療費・療育費・税の負担を減らす
この記事の目次
療育に通いはじめてから、月末に通帳を見るのが少し重くなった。手帳を受け取ったとき、税金のことまで教えてくれる人はいなかった。同じ教室の保護者が「特児」の話をしていたけれど、うちが対象なのかどうかも分からない——。発達障害や知的障害のある子の家庭が使えるお金は、大きく3つに分けられます。もらえるお金(手当)、安くなるお金(医療費と療育費)、戻ってくるお金(税金)です。そして、その入り口のほとんどは住んでいる市区町村の窓口です。この記事では、それぞれの制度が誰を対象にしていて、どこに申請するのかを一覧にしました。まず全体の地図をつかんで、気になったものだけ詳しい記事に進んでください。
使えるお金は「もらえる・安くなる・戻ってくる」の3つで整理できる
制度名を先に覚える必要はありません。お金がどう動くかで3つに分けると、自分の家に関係のあるものだけを拾えます。
| 区分 | 制度 | 誰が対象か | どこに申請するか |
|---|---|---|---|
| もらえる | 特別児童扶養手当 | 20歳未満で精神または身体に障害のある子を家庭で育てている父母等 | 住所地の市区町村 |
| もらえる | 障害児福祉手当 | 20歳未満で重い障害があり、日常生活で常時の介護が必要な在宅の子 | 住所地の市区町村 |
| 安くなる | こどもの医療費助成 | 自治体が決めた年齢までの子ども | 市区町村 |
| 安くなる | 自立支援医療(精神通院医療) | 通院での精神医療を続けて受ける必要がある人 | 市区町村の窓口(決定は都道府県・指定都市) |
| 安くなる | 自立支援医療(育成医療) | 18歳未満で、手術などにより身体の障害の改善が見込まれる子 | 市区町村の窓口 |
| 安くなる | 小児慢性特定疾病の医療費助成 | 対象の病気で治療が続いている18歳未満の子 | 都道府県・指定都市・中核市・児童相談所設置市 |
| 安くなる | 障害児通所支援の利用者負担(受給者証) | 児童発達支援や放課後等デイサービスを使う子 | 市区町村 |
| 安くなる | 手帳による運賃・受信料などの割引 | 手帳を持っている本人と、その家族 | 各事業者・市区町村 |
| 戻ってくる | 障害者控除(所得税・住民税) | 手帳の交付を受けている子を扶養している人 | 勤務先の年末調整、または確定申告 |
| 将来に備える | 心身障害者扶養共済制度 | 障害のある人を扶養している保護者 | 都道府県・指定都市 |
金額と条件は2026年時点のものです。こどもの医療費助成のように市区町村が独自に決めている制度は、対象年齢も自己負担の有無も住んでいる場所で変わります。ここに書いた内容は「窓口で何を聞けばいいか」の当たりをつけるために使い、最終的な条件はお住まいの自治体で確認してください。

もらえるお金:手当は2つ。対象と金額が違う
現金が振り込まれる手当は、特別児童扶養手当と障害児福祉手当の2つです。どちらも20歳未満が対象で、申請先は住所地の市区町村です。
特別児童扶養手当は、精神または身体に障害のある20歳未満の子を家庭で育てている父母などに支給されます。厚生労働省が示している2026年4月からの月額は、1級が58,450円、2級が38,930円です。原則として毎年4月・8月・12月に、それぞれの前月分までがまとめて振り込まれます。受給資格者本人だけでなく、配偶者や生計を同じくする扶養義務者の前年の所得も見られます。
障害児福祉手当は、重い障害があって日常生活で常時の介護が必要な、在宅の20歳未満の人に支給されます。2026年4月からの月額は16,560円で、2月・5月・8月・11月に振り込まれます。こちらは施設に入所している場合は対象になりません。
💰 特別児童扶養手当
- 20歳未満の子を育てている父母等へ
- 1級58,450円/2級38,930円(月額)
- 4月・8月・12月にまとめて振り込み
- 父母や扶養義務者の前年所得で判定
🏠 障害児福祉手当
- 常時の介護が必要な在宅の子ども本人へ
- 16,560円(月額)
- 2月・5月・8月・11月に振り込み
- 本人・配偶者・扶養義務者の前年所得で判定
判定の材料になるのは、窓口に出した書類です。どのくらいの状態で何級になるのかは特別児童扶養手当がもらえる基準に、主治医に診断書を頼みづらいときの進め方は診断書を書いてもらえないときにまとめています。受給が決まったあとは毎年8月の所得状況届を出し続けることで支給が続きます。
⚠️ 自分から申請しないと始まりません
ここに挙げた制度は、条件を満たしていても自動では始まりません。支給や助成が始まるのは申請の手続きをしたあとで、気づいた時点までさかのぼって受け取れるとは限りません。
安くなるお金①:医療費は制度が重なる。どれが有利かで選ぶ
医療費の助成は3種類あり、対象が重なることがあります。まず自分の市区町村のこども医療費助成でどこまで無料になるかを確かめてから、足りない部分を他の制度で埋める順番が分かりやすいです。
こどもの医療費助成は、市区町村が独自に運営している制度です。こども家庭庁の調査では、2025年4月1日時点で、すべての都道府県と市区町村がこどもに係る医療費の助成を実施していました。市区町村では、通院・入院ともに18歳の年度末までを対象にするところが最も多くなっています。年齢の区切りも自己負担の有無も自治体ごとに違うので、ここだけは自分の市区町村のページを見るしかありません。
自立支援医療は、決まった医療を続けて受けるときの自己負担を軽くする国の制度です。通院での精神医療を続けて必要とする人が使う「精神通院医療」と、18歳未満で手術などにより身体の障害の改善が見込まれる子が使う「育成医療」があります。所得に応じて、ひと月に払う自己負担の上限額が決まる仕組みです。窓口となるのは市区町村です。
小児慢性特定疾病の医療費助成は、長く治療が続く特定の病気が対象です。小児慢性特定疾病情報センターは、18歳未満の児童等が対象で、18歳になった時点で対象になっていて引き続き治療が必要と認められる場合は20歳未満まで続けられると案内しています。申請先は都道府県・指定都市・中核市・児童相談所設置市です。
どれを使うか迷ったら、窓口で「うちの市のこども医療費助成で通院はいくらまで無料になりますか」「そのうえで自立支援医療を申請する意味はありますか」と続けて聞いてみてください。この2つを並べて聞くと、自分の家ではどちらを先に動かせばいいかの見当がつきます。
安くなるお金②:療育・通所にはひと月の上限がある
児童発達支援や放課後等デイサービスの利用者負担は、使った回数に応じて無限に増える仕組みではありません。世帯の状況に応じて、ひと月に払う上限額が決まっています。
| 世帯の状況 | ひと月の負担上限額(通所) |
|---|---|
| 生活保護を受けている世帯 | 0円 |
| 市町村民税が非課税の世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯のうち所得割28万円未満 | 4,600円 |
| それ以外の世帯 | 37,200円 |
入所施設を使う場合は、所得割28万円未満の区分が9,300円になります。上限に達したあとは、その月にどれだけ通っても利用者負担は増えません。週の回数を増やすかどうかを考えるとき、この点は判断材料になります。
さらに就学前は、この負担そのものがかかりません。こども家庭庁は、2019年10月から、満3歳になって最初の4月1日からの3年間、児童発達支援などの利用者負担を無償にしていて、新たな手続きは必要ないと案内しています。幼稚園・保育所などと児童発達支援などを両方使う場合も、どちらも無償化の対象です。ただし食費のように実費で払っているものは、これまでどおり支払いが続きます。
通所を使うための受給者証は、療育手帳とは別の仕組みです。違いは受給者証と療育手帳の違いに、申請から手元に届くまでの流れは受給者証の申請の流れにまとめています。
戻ってくるお金:障害者控除は15歳以下の子でも使える
税は、申告して初めて戻ってくるお金です。手当のような審査はなく、要件に当てはまれば必ず所得から差し引けます。
国税庁が示す障害者控除の額は、障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居している特別障害者なら75万円です。療育手帳の交付を受けている子は障害者控除の対象で、重度と判定されていれば特別障害者にあたります。精神障害者保健福祉手帳の場合は1級が特別障害者です。
見落とされやすいのが年齢との関係です。扶養控除は15歳以下の子には使えませんが、国税庁は、障害者控除については扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族がいる場合にも適用されると明記しています。小学生でも幼児でも、手帳があれば障害者控除は使えます。
手続きは、会社員なら年末調整で出す扶養控除等申告書に書くだけです。書き忘れた年があっても、あとから確定申告で申告し直せます。書き方や、住民税での扱いは障害児の扶養控除と障害者控除で詳しく扱っています。
手帳で安くなるものと、20歳から先のお金
手帳を持っていると、運賃や公共料金でも負担が下がります。内容は自治体や事業者ごとに違い、等級によっても変わります。
静岡市の案内では、JR・バス・電車の運賃は手帳の等級によって割引率や介護者の扱いが変わり、有料道路の割引は身体障害者手帳1種と療育手帳Aの人が対象で、本人か介護者が運転する場合に使えます。NHKの放送受信料は、手帳を持つ人がいる世帯で世帯全員が市民税非課税なら全額免除、重度の手帳を持つ人が世帯主かつ契約者なら半額免除と説明されています。厚生労働省も、手帳を持つ人が自治体や事業者の独自サービスを受けられることがあると示しています。住んでいる市区町村の「障害者福祉のしおり」に一覧が載っていることが多いので、一度もらっておくと便利です。
手帳を取るかどうか自体を迷っている場合は療育手帳を取るデメリットを、知的障害をともなわない子の選択肢としては子どもの精神障害者保健福祉手帳を読んでみてください。
将来のことも、ここで少しだけ触れておきます。特別児童扶養手当も障害児福祉手当も、対象は20歳未満です。20歳から先は別の仕組みに変わります。親が亡くなったあとに備える公的な仕組みとしては、都道府県と指定都市が運営する心身障害者扶養共済制度があります。岐阜県は、保護者が生きているあいだ毎月の掛金を納めることで、保護者に万一のことがあったときに障害のある人へ終身の年金が支払われる制度だと説明しています。年金は1口あたり月2万円で、2口まで加入でき、非課税世帯などは掛金が減免される場合があります。
💡 全部を今すぐ使う必要はありません
ここに並べた制度は、いま全部を申請するためのものではありません。子どもの年齢や状態が変われば、使えるものも変わります。今日この一覧を見て「うちにも関係あるかも」と思えたなら、それだけで十分前に進んでいます。
まとめ
- お金の制度は「もらえる(手当)」「安くなる(医療費・療育費・手帳の割引)」「戻ってくる(税)」の3つで整理すると全体が見える
- 手当は特別児童扶養手当と障害児福祉手当の2つ。どちらも20歳未満が対象で、申請先は住所地の市区町村
- 療育・通所の利用者負担にはひと月の上限があり、就学前の3年間は児童発達支援などの利用者負担がかからない
- 障害者控除は、扶養控除が使えない15歳以下の子でも使える。年末調整か確定申告で自分から申告する
- 金額も対象年齢も自治体で変わる。ここで当たりをつけて、窓口では制度名を出して確認する
今夜はここまでで大丈夫です。明日、気持ちに余裕があるときに、上の一覧で「これはうちも当てはまるかも」と思ったものをひとつだけ選んで、市区町村の障害福祉の窓口に電話をかけてみてください。全部を一度に申請する必要はありません。
よくある質問
療育手帳がないと、手当や助成は受けられませんか?
制度ごとに要件が違います。特別児童扶養手当は手帳の有無ではなく、提出された診断書などの書類をもとに等級が判定されます。児童発達支援を使うための受給者証も、手帳とは別の仕組みです。一方で、税の障害者控除や交通機関の割引は手帳が前提になります。
いくつもの制度を、全部いっぺんに申請しないといけませんか?
いいえ。制度ごとにばらばらに申請できますし、順番も自由です。多くの家庭は、まず療育に通うための受給者証から動き始めます。手当や税の控除は、書類がそろってからで間に合います。ひとつ窓口に行くと、他に使えそうな制度を案内してもらえることもあります。
収入が多いと、どれも使えないのでしょうか?
所得で止まるのはおもに手当です。特別児童扶養手当と障害児福祉手当には所得制限があります。障害児通所支援の利用者負担は、所得の高い世帯でもひと月37,200円が上限です。税の障害者控除は、所得の多い少ないにかかわらず申告できます。
保育園に通いながら児童発達支援も使う場合、両方にお金がかかりますか?
こども家庭庁は、幼稚園・保育所・認定こども園などと児童発達支援などの両方を利用する場合、どちらも無償化の対象になると案内しています。対象になるのは満3歳になって最初の4月1日からの3年間です。ただし食費のように実費で払っているものは、これまでどおり負担が続きます。